人生は有限です。
だからこそ、「お金・時間・健康」をどのタイミングでどう使うかによって、人生の豊かさは大きく変わってきます。
近年注目されている書籍『DIE WITH ZERO(ダイ・ウィズ・ゼロ)』では、人生をより充実させるための「お金の使い方」と「生き方の最適化」について、明快なメッセージが示されています。
若いときに節約ばかりして、老後にお金を残しても、それを十分に楽しめる健康と体力がなければ意味がない。
そんな考え方は、FIRE(経済的自立と早期退職)を目指す人にも深く関係するものです。
この記事では、『DIE WITH ZERO』のエッセンスをもとに、「お金・時間・健康」の最適な使い方について考えていきます。
今のあなたの年齢だからこそできる選択を見つけてみませんか?
「DIE WITH ZERO」が教えてくれる人生の使い方とは?

『DIE WITH ZERO』は、アメリカの元ヘッジファンドマネージャーであるビル・パーキンスによって書かれたベストセラーです。
この本の最大のメッセージは、「人生の終わりにお金を余らせて死ぬことが目的ではない」ということ。
むしろ、お金を“人生を豊かにする体験”に使い切ることが、後悔のない人生につながると説いています。
特に注目すべきは、「人生のステージごとにできることが違う」という視点です。
- 若いときは体力と時間はあるけれど、お金がない
- 働き盛りは体力とお金はあるけれど、時間がない
- 老後は時間とお金はあるけれど、体力がない
つまり、人生のどの時期にも「リソースの偏り」があるのです。
だからこそ、その時々の自分の「お金・時間・健康」のバランスを見極めて、最も価値のある使い方をしていくことが大切です。
本書では、こうした「人生のタイミングとリソースの関係性」を理解することで、自分にとって本当に意味のあるお金の使い方や、価値ある時間の過ごし方が見えてくると教えてくれます。
年齢によって変わる「お金・時間・健康」のバランス

人生のなかで「お金」「時間」「健康」のバランスは、年齢とともに大きく変化します。
この3つのリソースは、どれかひとつが欠けても充実した人生を送ることは難しく、しかも3つが同時に揃う時期は意外と短いものです。
代表的なライフステージごとのバランスは、以下のように表現できます。
ライフステージ | お金 | 時間 | 健康 |
---|---|---|---|
若いころ(10〜20代) | ×(少ない) | ◯(多い) | ◎(元気) |
働き盛り(30〜50代) | ◎(稼ぎあり) | ×(忙しい) | ◯(やや余裕あり) |
老後(60代〜) | ◯(貯蓄あり) | ◎(時間あり) | ×(体力低下) |
このように、「今の自分は何があって、何が欠けているのか?」を意識することが、資源の最適な使い方を考える第一歩です。
たとえば、若いときに無理してまで節約ばかりしても、健康と時間を有効活用できないまま大切な経験の機会を逃すかもしれません。
逆に老後に多額の資産があっても、体が思うように動かず旅行すら楽しめないこともあるでしょう。
「健康で、時間もあるうちに、体験にお金を使う」という意識が、人生の豊かさを大きく左右するのです。
健康寿命と平均寿命のギャップを知る

「寿命」と聞くと、多くの人が「人生の終わり」をイメージしますが、実際には「健康に過ごせる期間=健康寿命」と、「生きている期間=平均寿命」には大きな差があります。
たとえば日本人の平均寿命はーー
- 男性:81.64歳
- 女性:87.74歳
ですが、健康寿命(介護などに頼らず自立して生活できる年齢)はーー
- 男性:72.57歳
- 女性:75.45歳
となっており、平均して約10年間は「不自由な状態」で生きることになります。
つまり、「老後にお金があるから安心」と思っていても、健康を失った状態では、できることが大きく制限されるという現実があります。
たとえば旅行ひとつとっても、80代になってからでは移動や長時間の外出が負担になり、せっかくの資金を有効に使うことが難しくなるかもしれません。
だからこそ、「元気なうちにお金を使う計画」を立てることが大切です。
人生の終盤まで漠然と貯金するのではなく、健康寿命を意識してライフプランを組み立てることで、本当に価値ある使い方が見えてくるのです。
なぜ若いうちに経験にお金を使うべきなのか?

若いうちは「お金がないから節約しなきゃ」と思いがちですが、『DIE WITH ZERO』の著者ビル・パーキンスは、「若いうちにこそ、経験にお金を使うべきだ」と強く主張しています。
その理由はシンプルです。
若いころに得た経験は、その後の人生を通じて“思い出”として何度もリターンを生んでくれるからです。
筆者自身の体験として、学生時代の長期休みにアルバイトをせず、日本中を旅して回ったことがあります。
当然、資金も限られていたので、足らない分は銀行のカードローンを利用していました。一時的に借金をして旅していたということになります。
しかし、そのとき得た体験は、今でも心の財産として残っています。
その後社会人になってからは、借金などすぐに返済でき、経済的にも何ら問題はありませんでした。
一度きりの青春や若い時間を、「将来のために」と我慢してばかりいるのは、非常にもったいないのです。
年齢を重ねるごとに、体力も感受性も徐々に失われていきます。
20代・30代のフレッシュな感性で旅した景色や挑戦したことは、「経験のストック資産」として一生残るのです。
お金はあとから取り戻せますが、時間と若さは二度と戻りません。
だからこそ、将来のために全てを我慢するのではなく、「今、この瞬間を最大限に活かす選択」が、豊かな人生には必要なのです。

ちなみに「深夜特急」の著者沢木耕太郎氏は、旅に出る適齢期は26歳」と述べています。それ以前だと人生経験がなさすぎて消化できないし、それ以降はいろんな経験が積み重なって吸収する力が欠けていくということらしいです。
旅の仕方もいろいろですが、それぞれの目的を見失わないことが、人生の価値を最大化することになるんですね。
「お金を貯める」だけじゃダメ!年齢に合わせた最適化戦略


多くの人が「とにかくお金を貯めることが正解」だと思い込んでいます。
確かに貯金は大切ですが、それだけに偏ってしまうと、お金を使うべきタイミングを逃してしまうリスクもあるのです。
『DIE WITH ZERO』では、人生の各ステージで「お金・時間・健康」のリソースを最適化しながら使っていくことの重要性が語られています。
単に貯めるのではなく、“いつ・どれだけ・何に使うか”を意識したライフデザインが求められます。
たとえば以下のような視点を持つと、お金の使い方が変わってきます。
- 20〜30代: 体力も感性も豊か。経験にお金を使うべき時期。
- 40〜50代: 経済的に余裕が出てくるが、忙しく時間がない。
だからこそ意識的に「使う時間」をつくる工夫が必要。 - 60代以降: 時間とお金はあっても、健康には限界が。
無理のない範囲で「人生の締めくくり」を設計するフェーズ。
このように、年齢や状況に応じてお金の使い方を柔軟に見直すことで、「死ぬ直前にゼロになる」理想的な人生設計に近づけます。
FIREを目指す方にとっても、資産の最大化だけでなく、「使うタイミングと健康状態の最適化」こそが、本当の意味での自立と自由をもたらすのです。
FIREとの相性も抜群|健康なうちに自由を手にする生き方


『DIE WITH ZERO』の考え方は、FIRE(経済的自立・早期退職)を目指す人にとって、非常に相性の良い人生戦略です。
FIREとは、働かなくても生活できる資産を築き、時間とお金の自由を手に入れること。
しかし忘れてはいけないのは、「健康」というリソースにも限りがあるということです。
仮に60代で仕事をリタイアしても、すでに体力や自由な行動に制限が出始めているかもしれません。
一方で、50代前半くらいまででFIREを実現できれば、心身ともに余裕のある自由な時間を思いきり楽しめます。
FIREをただの「リタイア」ではなく、「健康なうちに、やりたいことに挑戦できる人生の設計」と捉えることで、DIE WITH ZEROの哲学がより実践的に活かされるようになります。
重要なのは、「何歳でFIREするか」ではなく、「FIRE後の時間をどう過ごすか」「どの時期に何を体験したいか」という視点です。
計画的に資産を築く一方で、健康で活力のある時期を無駄にしないという考え方が、DIE WITH ZEROの本質でもあり、FIRE達成後の人生を豊かにする鍵でもあります。
まとめ|使い切る勇気が、豊かな人生をつくる
『DIE WITH ZERO』が教えてくれるのは、「ただ長生きする」よりも、「どう生きるか」のほうが大切というシンプルな真実です。
お金を貯めるだけでなく、時間と健康という見えにくいリソースも意識しながら、年齢に応じた最適な使い方を選んでいくことが、後悔のない人生につながります。
「いつか使おう」「もっと貯めてから」と先延ばしにするのではなく、今の自分だからこそできる体験や選択に投資する勇気を持つことが、人生の価値を高めてくれるのです。
FIREを目指す人にとっても、資産形成や節約だけに意識を向けるのではなく、「使う力」も育てることが、心から満足できる自由な人生のカギとなります。
あなたは、いつ、何にお金を使いたいですか?
「人生のどの瞬間に、どんな思い出を残したいか」から逆算して、使い切る計画を立ててみてはいかがでしょうか。



『DIE WITH ZERO』は人生について考えるときに、とても参考になる名著です。僕自身も、闇雲にお金を貯めていた過去にタイムスリップして、この本に出会いたかったと思っているくらいです。
もしまだ読んでない人がいれば、ぜひ。出来るだけ若いうちに。